たくあん

たくあん

たくあんが嫌いな人も結構多いですよね。私は今までいちどもたくあんが臭いとは思っていなかったのですが、確かに言われてみればたくあんには強い臭いがあります。冷蔵庫なんかにしまっておくと、開けた瞬間にたくあんの臭いが広がるなんてこともしばしば。外国から来た人などは、その臭いに拒絶反応を示すこともあるようです。イギリスの女性旅行家イザベラ・バードは著書の「日本紀行」で、「誰かがたくあんを食べているときは、同じ家のなかにいられないほどで、これよりひどい臭いはスカンクしか無い」と描写しているほど。たくあんも、日本独特の臭いなのかもしれませんね。

たくあんとは

たくあん(沢庵)は、大根を糠と塩などで漬けた漬物です。江戸時代に臨済宗の僧・沢庵宗彭が考案したという言い伝えがあります。沢庵宗彭が創建した東海寺では、「初めは名も無い漬物だったが、ある時徳川家康がここを訪れた際に供したところ、たいそう気に入り、『名前がないのであれば、沢庵漬けと呼ぶべし』と言った」と伝えられています、東海寺では禅師の名前を呼び捨てにするのは非礼にあたるため、沢庵ではなく「百本」と呼ばれています。また、沢庵和尚の墓の形状が漬物石の形状に似ていたことに由来するという説もあります。また別の説によれば、元々は「じゃくあん漬け」と呼ばれており「混じり気のないもの」、あるいは、「貯え漬け(たくわえづけ)」が転じたものであり、後に沢庵宗彭の存在が出てきたことにより、「じゃくあん」「たくわえ」→「たくあん」「沢庵和尚の考案したもの」という語源俗解が生まれたともされています。この大根の漬物は、18世紀に江戸だけではなく京都や九州にも広がり食べられていました。

二切れのたくあん

和食料理屋や、定食屋などでおかずの一品としてたくあんが二切れついてくることがよくあると思います。このたくあんを二切れ出すという習慣は、江戸時代から始まったと言われています。侍が世の中の中心だった江戸時代に、たくあんはおかずに欠かせない定番メニューでした。当時、侍にたくあんを一切れ、もしくは三切れだけ出すのはタブーとされていました。それは、一切れは「人斬れ」に通じるから。三切れは「身斬れ=腹を切れ」に通じるからという理由だったと言われています。このダジャレのような言葉運びから生まれたのが、たくあんを二切れ出すという習慣でした。ただし、この理由は江戸を中心とした武家政権が確立された地区の習慣だとする説もあります。関西ではたくあんを三切れ出すことは縁起を担ぐものとされ、関西の丼専門店ではあえて三切れのたくあんを出す店もあります。余談ですが、日本の刑務所でも食事にたくあんが出されることがあり、その場合は一人当たり25g前後と決められているそうです。

たくあんの作り方

日本でのたくあんの伝統的な製法では、手で曲げられる程度に大根を数日間日干しして、このしなびた大根を容器に入れて米糠と塩で1ヶ月~数か月漬けます。風味付けに昆布や唐辛子、柿の皮などを加えることもあります。大根を日干しして塩を加えて漬けて水分を減らすことにより、大根本来の味が濃縮され、塩味が加わり、米糠の中に存在する麹がでんぷんを分解して生じる糖分によって甘味が増すと共に、徐々に黄褐色へと染まっていきます。しかし、現在商品として流通している大多数のたくあんは、日干し大根の替わりに塩や糖液に漬けて水分を除いた塩押し大根や糖絞り大根を使用することが多く、伝統的な沢庵とは食感や風味が異なります。また、甘味料やうま味調味料などを配合した調味液で調味したり、人口着色料で色付けするなどして加工されていることもあります。これは時代が下るにつれて消費者の嗜好がより甘く低塩分な漬物を求めるようになった事、また大量生産、コスト削減のために製造工程の短略化を図ったことなどに由来しています。その一方で、三浦半島や三重県伊勢地方、徳島県などでは、伝統的製法による沢庵が今なお商品として生産されており、付加価値が付いた名物となると共に一定の需要を得ています。伝統的な糠漬けの製法で作ったたくあんは、米糠の中に含まれる枯草菌の産出物によって、ダイコンが徐々に芯まで黄色から褐色に染まっていきます。しかし、菌の作用は地域や環境によって異なるため、沢庵の色は統一されにくく、また、味などの商品の品質も不安定です。そのため、近年大量生産されている商品では、糠漬けであってもウコンやクチナシの色素を加えることで画一的に黄色く着色したものが主流になっています。たくあんは家庭でも漬けることが出来るため、八百屋などでは時期になると、10~20本のたくあん用の干し大根が販売されます。しかし、梅干しやキュウリなどの糠漬けとは違い、数本程度の少量で漬けこむことが難しく、漬け込む際の臭いが敬遠されやすいこともあり、たくあんを漬ける家庭はそれほど多くはありません。

海外のたくあん

台湾

日本の統治が長かった台湾にもたくあんがあります。年配者は日本語のまま「タクアン」とも呼びますが、一般的には台湾語で「キヤムツァイポー」と呼ばれ、現在でも作られています。ツァイポーは本来、台湾や福建、広東潮汕地区に見られる干し大根を用いた漬物であり、本来は単なる塩漬けに近いものなのですが、黄色く染め、甘味を加えた日本式のたくあんも同じ名前で親しまれています。薄切りにしたキヤムツァイポーは、折詰弁当のおかずの一つとして、また、刻んだ煮込み豚バラ肉乗せご飯や、嘉義市の「鶏肉飯」などのごはん料理の定番の付け合わせとしても使われています。さらに刻んだ沢庵を玉子焼きに混ぜたり、春巻きの具にするなど、料理の材料としても使われています。日本が統治していた当時は徳島県などから供給されていたそうですが、現在は台湾現地産や中国産が主となっています。

韓国

韓国にも、日本統治時代にたくあんが持ち込まれました。「日帝の持ち込んだもので良かったものは、たくあんだけ」という格言があるほど韓国社会に受容されており、現在では韓国全土に広く普及しています。日本語のたくあんが朝鮮語式発音にかわった「タカン」、または韓国語での造語である「タンムジ」と呼ばれています。「タン」は甘い、「ム」は大根、「ジ」は漬物という意味です。味は甘酸っぱい傾向があるものの、ほぼ日本のものと同じ味です。朝鮮固有のチャンジという漬物もありますが、これは名前通り(チャン=塩辛い)非常に塩辛い味になっています。また韓国では日本料理店のみならず、洋食を供するレストランでもたくあんが出されることがありますが、これは洋食そのものが日本から伝わったものであるために定着した現象です。

たくあんを食べてみよう!

たくあんは、糠から取り出した大根を水洗いして糠を落とし、薄切りにして食べます。ご飯のおかずとして食べたり、お茶請けにも用いられます。千切りにして仕出し弁当の色合いとしても使われることがあります。日干し大根を用いた伝統的な製法のたくあんでは、古くなった場合、塩抜きして油いためにしたり、煮物などの料理に使うこともあります。炒飯の具にしたり、タルタルソースを作っても美味しいです。私のお気に入りは、太めの千切りにしたたくあんをフライパンでごま油で炒め、だしの素と七味唐辛子や鷹の爪でピリ辛に味付けしたものです。白いご飯にとっても良く合いますし、お弁当にもいいですよ!

色々なたくあん

地域や料理屋さんによってたくあんにも様々な種類や食べ方があります。以下にその代表例を挙げてみます。

  • 新香巻(しんこまき)・・・海苔の上に酢飯を乗せ、その上に細切りにした具(たくあん)をのせて巻き簾で細巻きにした海苔巻きのことです。二等分に切り、さらに二等分もしくは三等分に切って盛り付けます。お寿司屋さんで食べることが出来ます。
  • いぶりがっこ・・・「いぶしたくあん」とも呼ばれます。秋田県の郷土料理で、二十日間いぶし続けて燻製にした大根を漬けたものをいぶりがっこと言います。沢庵を燻製にしたものと間違えられることが多いです。
  • 遠州焼き・・・静岡県西部の浜松市を中心とする地域で食べられているお好み焼きです。小麦粉と卵で作った生地に、地元の三方原大根などで作ったたくあんを刻んで加え、豚肉、イカなどの具材と一緒に焼きます。キャベツは入れるところと入れないところがあります。味付けもソース風味と醤油風味のものがあります。
  • サラダパン・・・滋賀県長浜市で製造・販売されているパンです。マヨネーズで和えたたくあんの細切りを挟んだ惣菜パンで、テレビなどで取り上げられて話題となりました。

まとめ

世界の臭い物、日本の臭い物を見てきましたが、どれも文字で読むと強烈な臭いがしてきそうな気がしますね。でも、世界一臭いと言われているシュールストレミングでさえ、本場スウェーデンの人達にとっては普通に美味しく食べられるものなのですから不思議です。納豆しかり、くさやしかり、結局臭いに慣れてさえしまえば、どの食品も美味しく頂けるのではないかと思います。しかし、匂いも美味しいと感じるための一つの要素ではあるので、どんなに頑張ってもやっぱり無理!という人もいるのでしょうね。私はゲテモノ系は苦手なのですが、チーズだとかくさやだとかの臭い物系は平気なので、いつかはこれらの食品にチャレンジしてみたいなと思います。一番気になったのはキビヤックですね!動画を見ただけでうえってなりそうでしたが、どんな味なのかぜひとも体験してみたいところです。一番食べられそうなのはシュールストレミングな気がします。野菜やチーズと一緒にピタパンに包んで食べている様子は中々美味しそうでした。世界にはまだまだ知らない不思議な食べ物がいっぱいあります。みなさんもこれらの臭い食べ物に遭遇したら、是非チャレンジしてみてくださいね!